熱“力学”というからには、力学と同様に力について考えるべきである。気体を熱すれば膨張する。それを冷やせば今度は収縮する。この力を利用すれば、人間や馬が重労働をしなくても済む。ただ熱したり冷やしたりを繰り返すだけでいい。そう考えて、18世紀にニューコメンは蒸気機関を発明した。それをさらに改良したのがワットである。
膨張や収縮の力を発生させる熱運動とは、物質を構成している分子の運動である。この分子運動をニュートン力学で解き明かしていく。しかし、分子1個の運動を細かに計算したところで、例えば1molの気体があれば6.02×10の23乗個もの分子があり、個々について考えようとしても考えきれるものではないし、計算しようとしても到底無理である。そこで、数多くの分子について統計をとり、「全体としての性質」について着目してやると、全体としてある規則に従っていることが見えてくる。それが大学で学ぶ「統計力学」である。確率・統計という数学が力学とどう結びつくのか、非常に面白い学問である。
私は高校数学までの確率は苦手だったが、統計力学はなぜか得意だった。というか統計力学を学んでから確率のことがようやく理解できたような気がする。そんなわけで熱力学には感謝している。
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