物理 電磁気17 自己誘導と相互誘導

ふぃじっくす

どうも、やまとです。

前回、回路を貫く磁束の変化によって起電力が生じる”電磁誘導”について学びました。コイルに流れる電流が変化すると磁束の変化が起こるので、この場合にも電磁誘導が起こることになります。この現象について見ていきましょう。

aの回路はスイッチの切り替えで瞬時に電流の値が変わるのに対し、bの回路ではコイルに生じる誘導起電力によって電流の変化に時間がかかります。これをコイルの”自己誘導”といいます。

誘導起電力は常に電流の変化を妨げる向きになりますから、グラフのようになります。

ソレノイドコイルに生じる誘導起電力を考えてみましょう。コイルに生じる磁束は磁束密度と面積の積で表せます。磁束密度は電流に依存する量ですから、電流が変化するときは磁束も変化します。

電磁誘導の法則から誘導起電力を求めると、単位時間あたりの電流の変化によって誘導起電力の大きさが求まります。このコイルの形状と材質によって決まる係数を”自己インダクタンス”といいます。向きはレンツの法則によって求められますが、数式で処理するときはマイナスをつけておきましょう。

コイルに電流を流すときには、誘導起電力に逆らって電池は仕事をする必要があります。その仕事は、コイルが作る磁場のエネルギーとして蓄えられることになります。

電流をΔiだけ増加させるときの微小な仕事はLiΔi となるので、縦軸にLi、横軸にiをとるグラフを考えると、緑の長方形の面積となります。電流を0からIまで変化させるときは、この長方形の面積の総和として青の三角形の面積を求めればよく、この仕事がコイルに蓄えられるエネルギーとなります。

図のように、鉄心を介してコイル1と2を並べて置き、コイル1のスイッチを開閉してみます。コイル1には自己誘導が起こりますが、コイル2にも同じ磁束線が貫くため誘導起電力が発生します。これが”相互誘導”です。

図はスイッチを入れてコイル1に電流が流れ、右向きの磁束が増加するときです。コイル1と2にはその変化を打ち消す向きに磁場が誘導されるように、誘導起電力が生じます。

磁束の変化が同じことからコイル2の誘導起電力の大きさを求めると、コイル1の自己インダクタンスと巻き数の比で表される”相互インダクタンス”を係数として、単位時間当たりの電流1の変化で表すことができます。

相互誘導を利用すると、2次コイルの巻き数によって電圧を任意に変えることができます。図は変圧器(トランス)の仕組みを簡単に表したものです。例の図は1次コイルの電流が矢印の向きに増加するときを表します。

上の図では2次コイルに上向きの磁束が増加するので、下向きの磁場を生じる向きの誘導電流が流れ、下の図では下向きの磁束が増加するので、上向きの磁場を生じる向きの誘導電流が流れます。

交流については、次回詳しく学びますが、常に電圧の向きと大きさが変化します。この交流を直流と同様に扱う考え方を実効値といいます。実効値を表すときは添え字eを付けることにしましょう。

1次コイルと2次コイルの電圧の比は、コイルの巻き数の比で容易に変圧できます。例では簡単のために、1次コイルを100回巻きにし交流100Vの電圧をかけます。取り出したい電圧によって2次コイルの巻き数を変えると、1.5Vや200Vにすることができます。

1次コイルの電圧と電流が図のようにsin関数として変化すると、その積である電力はsin2乗の関数になります。次回に詳しく見ていきますが、この形は覚えておきましょう。

理想的な変圧器の場合、エネルギー保存則を考慮すると2次コイルの電力も同じとなり、コイルの巻き数が2:1の比であれば、図のような電圧と電流が取り出せます。では、発電所で発電された交流がどのように家庭に届くのかを見てみましょう。

発電された交流の電気(約20kV)は、変電所で500kVや275kVに上げて送電線で各地の変電所に送られます。家庭付近の電線では約6600Vに下げられ、電柱の変圧器でさらに100Vや200V下げられます。

送電線を通る間に発生するジュール熱が損失する電力ですから、これは電流の2乗に依存します。したがって、電圧を上げて電流を下げれて送電すれば損失を減らすことができます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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