物理 原子9 原子核・放射線

ふぃじっくす

どうも、やまとです。

1897年の電子の発見から、1900年前半では多くの研究者の功績によって原子の様子がだんだんとわかってきました。そして原子核の中には不安定なものがあり、放射線を出して別の原子核に変わっていく現象が観測されました。

ここでは原子核の構成と放射性崩壊について見ていきましょう。

原子は中心にある原子核とその周りをとりまく電子からなります。原子核は、原子の10万分の1程度の大きさで、正の電気量を持つ陽子と電気を持たない中性子からなります。原子核を構成する陽子と中性子を、核子といいます。

元素記号で表すと、化学反応や核反応を数式化するのに便利です。元素記号の左下は原子番号で、これは陽子の数のことです。左上は質量数で、陽子の数と中性子の数の和、つまり核子の総数を表しています。

陽子どうしには反発力がはたらくはずですが、原子核は非常に狭い空間に正の電荷と電荷を持たない粒子が集まっています。これは静電気力よりもはるかに強い力で引き合っているためで、これを核力といいます。核力の起源を探っていったのが日本人として初めてノーベル賞を受賞した、湯川秀樹博士です。

陽子の数が同じでも、中性子の数が異なる原子があります。これを同位体(アイソトープ)といいます。物理的性質の違いは、たとえば質量や融点、沸点などです。

トムソンは電場と磁場を加えた空間にイオンを入射させ、比電荷の同じイオンがスクリーン上の同じ放物線上に集まるような装置を製作しました。これによってネオンには質量数が20のもののほか、22のものがあることが分かりました。

このような装置を質量分析器といい、多くの同位体を発見するとともに、それらの質量と存在比を精密に測定することが可能となりました。天然に存在する同位体の存在比はほぼ一定です。

私たちはスケールによって単位を変えますね。普段使う質量はkgやgですが、もっと大きいものはt(トン)を使ったりします。原子はkgにくらべて小さいので、原子に見合った単位で質量を表します。これが統一原子質量単位です。

ちなみに私は長らくuのことをunit(単位)のことだと思っていましたが、unified(統一)に由来したものだということで、ユーと読むのがよさそうです。

化学では原子量をよく使いますが、その定義はよくわからない(わからなくてもなんとかなる)のではないかと思います。それは統一原子質量単位に触れないからだと思います。原子量とは”各同位体の相対質量に、その存在比を掛け算して計算した平均値”のことです。

基準としている炭素にも同位体が存在するので、炭素12の原子量は12でも、一般的な炭素の原子量は12ではありません。上の計算によって炭素12と炭素13の平均を求めたものが炭素の原子量です(でも実際の問題では有効数字2桁でC:12とかNa:23が与えられますね)。

さらに物質量の復習ですが、炭素12原子12g中に含まれる原子の個数を1mol(=6.02×10の23乗:アボガドロ数)としたのでした。日常的に扱う物質は炭素1個、2個という単位では表せませんから、モルという粒子の集まりで数えるわけです。そのようにすると原子量Mの元素1molの質量をM〔g〕とすることができ、私たちのスケールに合った単位になります。

ウランやラジウムなどの原子核は、不安定で放射線を出して別の原子核に変化していきます。これを放射性崩壊といい、自然に放射能を出す性質を放射能、放射能を持つ物質を放射性物質といいます。

放射線には上に挙げた4つの性質があり、図のように磁場の中で異なる進み方をします(フレミング左手の法則)。磁場の中で正電荷と同じように曲げられるものをα線、負電荷と同じように曲げられるものをβ線、直進するものをγ線といいます。それぞれの本体や特徴の強弱は表のとおりです。

α線は非常に大きな電離作用を持つ代わりに透過力は小さく防護は容易です。γ線は電離作用は弱い代わりに透過力が大きく、鉛の板が数十センチないと遮蔽できません。また、中性子の流れである中性子線やX線も放射線の一種です。中性子線は鉛板を透過しますが、水に含まれる水素原子核で遮蔽されます。

放射性崩壊には大きく分けてアルファ崩壊とベータ崩壊の2種類あります。それぞれの原子核の変化の特徴を押さえましょう。α崩壊は原子番号-2、質量数ー4、β崩壊は原子番号+1、質量数±0です。

Ra(ラジウム)のα崩壊は図のようになります。原子番号は88ー2=86、質量数は226-4=222で中性子数は222-86=136です。できた原子核はRn(ラドン)です。

Tl(タリウム)のβ崩壊はβ-(ベータマイナス)崩壊といいます。β崩壊には複数の崩壊モードがあり、単にベータ崩壊というときはこれのことを指します。原子番号は81+1=82、質量数は変化しないので206、中性子数は206-82=124です。できた原子核はPb(鉛)です。

ベータ崩壊を眺めると、中性子の中には陽子と電子がもともとあるように見えます。中性子は陽子と電子の複合粒子かというとそうではないので注意が必要です。もしそうだとすると、いろいろとおかしなことが出てきてしまいます。このあたりのことを詳しく理解するには原子核物理を学ぶ必要があります。

崩壊したあとの原子核も不安定であることが多く、安定な原子核になるまで、アルファ崩壊とベータ崩壊を繰り返していきます。新しくできた原子核は励起状態にあることが多く、余分なエネルギーが電磁波として放出されます。これがガンマ線です。

図は崩壊系列と呼ばれます。ウラン238から出発してアルファ崩壊とベータ崩壊を繰り返していった結果、鉛206にたどりついています。元になった親核種によって最終的に生じる鉛の同位体は異なりますが、一般的には鉛206か207か208を生じます。

原子核の崩壊は確率的に起こる現象で、1個の原子核が1秒間に崩壊する確率は原子核の種類によって決まっています。もとの原子核の半分になるまでの時間を半減期といい、原子核の残留率について上の式が成り立ちます。

この計算には対数(log)を使うこともありますが、残留率が1/2の指数で表されるときには、両辺の指数の比較で解いていくことになります。

大気中には炭素の同位体である炭素14が一定の割合で存在しています。光合成によって二酸化炭素を取り込んでいる植物の炭素14の割合も大気と同様に一定です。木が枯れたり伐採されると炭素14は取り込まれなくなり、半減期5700年で減少していきます。このことから、木が生きていた当時の炭素14の含有率が現代と同じであるという仮定で、古い遺跡などの木材の炭素14の含有率を調べることで、遺跡の年代測定をすることができます。

放射能や放射線の測定単位には上のようなものがあります。人が放射線を受けることを被曝といい、放射線はその電離作用によって生物の細胞に影響を及ばします。この影響を小さくするには放射線源から離れたり、浴びる時間を短くする必要があります。

しかし、普通の生活を送っていても、空気中にはラドンが含まれていたり、宇宙からは宇宙線と呼ばれる様々な放射線を浴びています。食物や大地などから摂取する場合もあります。このようなものを自然放射線といい、年間で約2.4mSvくらいです。

胸部X線検査(レントゲン)やCT検査をすればX線を直に浴びることになります。このようなものを人工放射線といい、医療・工業・農業などの分野で幅広く利用されています。放射線を過度に恐れる必要はありませんが、使い方を誤れば非常に危険なものではあります。正しい知識と注意や対策を持っていきたいものです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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