どうも、やまとです。
前回は、光の粒子性を示す「光電効果」について学びました。ここでは、様々な分野で利用されているX線について見ていきましょう。

X線はドイツのレントゲンが発見しました。レントゲンが撮影した、指輪のついた手のX線写真は有名ですね!X線の1番の特徴は透過性です。医療では胸部レントゲン撮影などで使われ、空港の手荷物検査でも使われています。
また電場や磁場には影響されないことから荷電粒子ではないことがわかり、X線は紫外線よりも波長の短い(振動数の大きい)電磁波であることがわかりました。E=hνよりエネルギーが大きいので、殺菌や農作物の品種改良にも利用されます。

X線は陰極から放出される熱電子を高電圧で加速し、陽極の金属に衝突させることで発生します。X線には2種類あり、連続X線と特性(固有)X線です。
連続X線は金属中で熱電子の軌道が曲げられたり、減速したりすることで発生します。X線の波長と強さのグラフでは、滑らかな曲線になります。特性X線は熱電子が金属の電子が弾き飛ばし、外側の電子が落ち込んでくることで生じます。特性X線はグラフの途中の大きく跳ねているところです。特性X線は金属の材質によって決まります。
1個の電子の持つエネルギーの1部(または全部)がX線光子のエネルギーになり、残りは金属で生じる熱になります。熱が発生しない理想的な状況でエネルギー保存則を考えると上の式のようになり、λ0を最短波長といいます。

電磁波である光には波動性と粒子性の両方の特徴があることをすでに知っています。では光以外の電磁波も同じように2重の性質があるのでないか、ということです。
X線の波長は10の-9乗から-11乗程度です。ということは、光の実験で使う回折格子では格子の幅が大きすぎます。食塩などの結晶であれば、格子定数がちょうどよくなり、X線でも回折実験ができます。
右の写真はX線回折の2つの実験の結果です。デバイ・シェラー環は単色X線(単独の波長)、ラウエ斑点は白色X線(複数の波長)のものです。

結晶ではX線の波長とほぼ同じ間隔で原子が規則正しく並んでいます。そこにX線を入射すると散乱されたX線が干渉することによって、先ほどの写真のような模様が得られます。
イギリスのブラッグは、散乱されたX線が強めあうのは反射の法則を満たす方向で、しかも隣り合う2つの原子面で反射されたX線が同位相になるときと考えました。これは2つのX線の経路差が波長の整数倍になるときです。波動の分野で学んだ波の干渉と同様ですね!
このX線回折の実験で、原子間隔のわかっている結晶を使えば、未知のX線の波長測定ができ、波長のわかっているX線を使えば、結晶の平行面関学の測定をすることができます。

X線は波動性とともに、強い粒子性も示します。アメリカのコンプトンは、X線光子はエネルギーhνと上の式で表される運動量を持つとし、電子と衝突させたとき、両者のエネルギーの和と運動量の和が保存されると考えました。
これがコンプトン効果で、電子との衝突によって散乱されたX線の中に、もとのX線の波長より長いものが含まれるという現象です。

運動量はベクトル量なのでx軸・y軸に分解し、それぞれの方向について保存則を立てます。エネルギーはスカラー量なので、衝突の前後でのX線光子と電子が持つエネルギーを考えます。X線光子の運動量とエネルギーの表現が、新しく学んだところです。

すると、運動量保存則とエネルギー保存則から①~③の式を立てることができます。力学で学んだ小球の衝突問題と同様です。y軸方向は符号にも気を付けましょう。
ここから、電子の速さvと衝突後の電子の進む角度φを消していくことを考えます。

sinとcosを消去したいときにはsin^2θ+cos^2θ=1を使うことを考えましょう。①式と②式を移項して2乗した式を、①’・②’とします。これを辺々足せば θとφでそれぞれ2乗の足し算を作ることができますね!
まとめたものを④式としておきましょう。

エネルギー保存則の③式をこのように変形します。これは「運動エネルギーの項を運動量で表現する」という変形です。このようなことはあまり慣れていないかもしれませんが、これから多用していく式変形ですから覚えておきましょう。
変形した③式に④式を代入します。λとλ’が逆数の形になっているので、両辺に λλ’を掛け算します。すると右辺とcosθの項はきれいになります。

コンプトン効果による波長の変化は大きくはないので、λ≒λ’とするとλとλ’の比の足し算の項は2で近似できます。コンプトン効果による波長の伸びをコンプトン波長といい、定数部分を具体的に計算すると2.4×10の-12乗となります。
コンプトン効果は入射X線のエネルギーの一部が電子に与えられ、散乱X線のエネルギーが減少することによって起こります。定数部分の数値からX線では目立ちますが、可視光では無視できることもわかり、コンプトンは計算結果と実験結果がよく一致することを示しました。これがX線の粒子性を表す現象です。
光やX線のように、波動と考えられていたものが粒子性をもつのであれば、逆に粒子は波動性をもつのではないか…次回はそのことについて考えていきましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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[…] 物理 原子4 X線の波動性と粒子性どうも、やまとです。前回は、光の粒… […]