物理 原子1 トムソンの実験

ふぃじっくす

どうも、やまとです。

いよいよ高校物理の最後の単元、原子分野を学んでいきます。ここまでに学んだ力学・熱力学・波動・電磁気学の知識を総動員して理解していきましょう。まずは電磁気では当たり前のように扱ってきた、電子の発見についてです。

ドイツのガイスラ―やブリュッカーが発見した、真空放電するガラス管の真空度を増していったときに発する黄緑色の蛍光を陰極線といいます。

これらの性質は様々な種類のクルックス管で確認することができます。
①は衝立を置いた場合です。蛍光面には衝立の形の影ができます。
②は電場による、③は磁場による曲げられ方です。どちらも、負電荷が曲げられる向きに力を受けることがわかります。

陰極の金属や管内の気体の種類に寄らないことから、陰極からは負電荷を持った粒子が発生していることがわかり、それが電子の発見につながりました。では、電子の物理的な性質、具体的には質量や電気量はどれだけかということに興味がでます。それを調べるための有名な実験をいくつか見ていきましょう。

トムソンは図のような装置で電子の質量と電気量の比である、比電荷という量を求めました。電場や磁場の領域に電子を突入させて、蛍光面のどこに当たるかを調べていきます。

ちなみにこれを利用したのがブラウン管です。今では プラズマ テレビが主流になりましたが、その前はブラウン管テレビがほとんどでしたね!

図は、電場のみを加えたときの電子の軌道をx-z平面で見たときです。
電子は電場内でクーロン力を受けて曲げられ、電場から出たあとは直進し、蛍光面に衝突します。たどり着いた点Pの座標xを求めます。

電子はz方向には力を受けないので、等速直線運動をします。このことから電場を横切る時間を求めます。

x方向には電場内の加速度運動、電場から出た後の等速直線運動を考えます。電場を横切る時間を使えば電場を出るときの位置x1とx方向の速度成分vが求まります。

電場から出た後は電子はθ方向に直進していきます。速度からtanθを求めれば、蛍光板に当たる位置x2が求まります。これで点Pの座標xが①式で表されることがわかります!

電子の速度が分かれば、この式だけでも比電荷を求めることができます。電子の速度の求め方はこの項の最後に触れておきましょう。

次に磁場だけを加えたときの電子の軌道をy-z平面で見たときの図です。ローレンツ力を受けて運動する電子は円運動をしますから、電場のときよりも複雑ですね。特に角度の関係を見つけていくのがポイントになります。

まず磁場内での円運動の運動方程式を立て、半径を求めます。
また円の円周角をα(赤)、 中心角をβ(青)とすると、電子の初めの位置と磁場との境目での位置を結ぶ角度がα、境目での位置と点Qを結ぶ角度がβとなります。

1とy2は近似を使って求める必要があります。θが小さいときの斜辺と底辺の近似、対辺と弧の近似を使うとtanθはθに近似ができます。すると y1とy2はβを使って表すことができます。

またβにもこの近似を使うと、円運動の半径rと磁場の幅lを使って表せます。この近似の部分が非常に面倒に感じますが、頑張って②式を導出しましょう。実際の問題ではもう少し求めやすい出題の仕方になることもあります。次回、例題を見てみましょう。

さて、電子の速度を消去するために式変形をしてみましょう。電場から①’式、磁場から②’式を求めて、辺々を割ります。すると比電荷e/mが求まりました!

x,yを測定し、E,B,L,lを代入すると具体的な値が出てきます。トムソンの実験によって、物質には負電荷を持つ粒子が共通に含まれていることがわかりました。しかし、質量や電気量を個別に求めるためには、さらに工夫が必要です。次回は電気量を求めた実験を見ていきます。

電子の速度を求める方法を考えます。1つは電子銃の加速電圧からエネルギー保存則を使って求めるものです。ただし、この場合には電子の質量と電気量が必要なので、速度の中にさらに比電荷が現れることに注意です。

もう1つは速度選別器から求めるものです。図のように電場と磁場をかけると、クーロン力は上向き、ローレンツ力は下向きにはたらくので、電子が直進するように電場と磁場を調整します。このときの力のつりあいから、電子の速度を電場と磁場の大きさで表すことができます。

このようにこれまでの知識を使い、様々な工夫によって新しいことを生み出していく努力を先人たちがしてきたということを、私たちも理解していきましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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