偉人列伝~ニールス・ボーア

雑記

今日のお話は、物理の勉強をしていないとわかりづらいところもありますが、物理的な部分は本質ではないので聞き流してください。サイエンスの世界でよく聞く、ある物理学者にまつわる話です。話のオチを考えながら聞いてみるのも面白いと思います。

ラザフォード先生のお話

ノーベル物理学賞を受賞したアーネスト・ラザフォードが次のような話をしました。

「しばらく前に私は同僚から相談を受けました。彼は学生に物理の問題への回答の評価に0点を与えました。一方、学生は満点を要求してきました。教師と学生は公平な仲裁者を選ぶことに同意し、私が選ばれました。その試験問題は次のようなものでした。」

”気圧計を用いて、高い建物の高さを測定できることを示しなさい”

「学生は次のように答えました。」

『建物の屋上に気圧計を持って行って、それに長いロープを結び、地面までそれを降ろします。次にそれを持ち上げて、ロープの長さを測定します。ロープの長さが建物の高さです』

「学生はまさに完全に、そして正確に質問に答えたので、満点を認定される根拠を持っていましたが、もし満点を認定すれば、物理学の上級コースが与えられ、物理学の能力が証明されることになります。しかし、彼の答えではこれを立証できません。」

「私は学生に別の回答を試みるよう提案しました。答えが何らかの物理的知識を示さなければならない、という警告をつけて。質問に答えるために6分の時間を与えました。5分たっても、彼は何も書いていませんでした。私が諦めたのかと尋ねると、彼はこの問題への多くの答えを持っていると言いました。思考を中断させたことをわびて、続けるように頼みました。次の1分で、彼は答えを一気に書き上げました。」

ボーアの解答

『建物の屋上に気圧計を持って行って、屋根の上から身を乗り出します。気圧計を落としてストップウォッチでその落下時間を計ってください。そしてy=1/2×gt^2(自由落下の式)を用いて、建物の高さを計算します』

「この時点で、私は同僚に降参するか尋ねました。彼は負けを認めて、学生にほとんど満点を与えました。私は学生がほかの答えをたくさん持っていると言ったことを思い出し、それらを彼に尋ねました。」

『例えば、日当たりが良い日に気圧計をとりだし、気圧計の高さとその影の長さ、建物の影の長さを測定します。簡単な比の式を使って、建物の高さを測定できます。』

「すばらしい、他には?」

『はい、あなたが好むであろう非常に基礎的な測定方法があります。この方法では気圧計を持ち、階段を上へ歩き始めます。階段を登りながら、壁に気圧計の高さのしるしをつけていきます。屋上までしるしをつけ終わったら、しるしの数を数えます。これは気圧計の長さを単位とした建物の高さを与えてくれます。』

「まさに直接的な方法だね。」

『もちろん、もっと洗練された方法を望むなら、ひもの端に気圧計を縛り、振り子にしてそれを建物の屋上から揺り動かします。地面での重力加速度と屋上での重力加速度の違いから、建物の高さを計算できますし、同じ方法で振り子の歳差運動の周期からも計算できます。』

今回の教訓というか、話のオチ

『 最後に』

「彼は、こう締めくくりました。」

『おそらくベストな方法は、気圧計を持って、建物の管理人室のドアをノックします。管理人さんがいたら、こう言ってください。『ここに素晴らしい気圧計があります。このビルの高さを教えてくれたら、この気圧計を差し上げましょう』

「ってね」

ボーアは20世紀の物理学の2本柱の一つである「量子論」の育ての親ともいわれる人物です実はこの話は創作で、ボーアが学生のときにラザフォードとの接触はなかったようです。話の作者はボーアという人物の機転の良さと、社交性の高さを特徴づけたかったのだと思います。ボーアの実際の武勇伝でないからといって、この話の価値がなくなるわけではありません。この話のポイントは、問題の答えを覚えさせることが教育の目標なのではなく、ひとつの問題に対してさまざまなアプローチを試みること、あるいは知識を使いこなせるようになることが目標となるべきだ、ということでしょう。特に定期試験や受験勉強に関しては、答えや出題パターンの暗記に終始してしまうことも多いと思います。話の中のボーアも、教官が求める型にはまった答えを、おそらく知っていたことでしょう。しかし、画一的な考え方を求める教官に嫌気がさし、揺さぶりをかけたのだと思います

我が子よ、蜜を食べよ。これは良いものである。また、蜂の巣の滴りはあなたの口に甘い。

そのように魂にとって智恵は美味だと知れ。それを見出すなら確かに未来はある。あなたの希望が断たれることはない。

悪者よ。正しい人の住まいをねらうな。彼のいこいの場所を荒らすな。

正しい者は七たび倒れても、また起き上がるからだ。悪者はつまずいて滅びる。

旧約聖書 箴言24章13~16節

聖書の前後を見ると、蜂蜜と知恵の比較になっています。蜂蜜は口に甘いものですが、知恵は魂にとって甘くおいしいものなのです。魂はいつも先のことを考え、知恵は良い未来を保証しています。そして、正しいものは7たび倒れても、また起き上がるとあります。私たちの将来には、さまざまな困難が待ち受けているでしょう。しかし、人生七転び八起き。どれだけ失敗したとしても、そのたびに立ちあがるための知恵を磨いていきたいものです

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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