2000年度、東京大学の熱力学です。状態変化の過程で変化するものとしないもとを見つけ、状態方程式と熱力学第1法則の式を立てていきます。


初め、シリンダーAに理想気体を閉じ込め、シリンダーBは真空。コックCを開いて十分時間が経ったときがZ1。
ヒーターを入れて加熱。Aの断熱板が動いたときをZ2。
Z2からさらに加熱。気体の体積がΔVだけ増加したときをZ3。
Z2でCを閉め、Bの断熱板の留め具を外す。断熱板を素早く上下に振動させたあと、元の位置に戻して固定し、十分時間が経ったときをZ4。
状態を変化させたときの変化量に注意しましょう。

熱力学第1法則を使って、各状態変化を表現します。モル比熱で熱量を表し、マイヤーの式を導出できるようになっているといいですね。


気体が真空に拡散するときには、温度変化を伴いません。これを「断熱自由膨張」といいます。変化が断熱的であるということ、体積が変化しないことから、理解することができます。
あとはコックを開く前後の状態方程式でZ1の圧力を求めます。


断熱板が動き始める直前では、ばねは自然長で板の重力と気体の圧力による力がつりあっています。
さらにZ2の状態方程式から、このときの温度が求まります。


気体の体積がΔVだけ増えたことから、シリンダーの断面積で割るとばねの縮みがわかります。このときの板の力のつりあいから圧力を求め、圧力の変化量ΔPを求めます。

PーVグラフが右上がりの直線になることがわかれば、気体がした仕事はグラフの面積で求めることができます。
あるいは、断熱板の重力による位置エネルギーと弾性力による位置エネルギーの増加量の和から求めることもできます。

熱力学第1法則から気体が吸収した熱量を求めます。状態方程式を使って、PVとnRTを変換し、問題で指定された文字で答えるようにしましょう。


コックを開いて一様な状態になったあと、コックを閉めると気体の物質量は体積比で分配されます。この問題の場合は、AとBが同じ体積なので物質量は半分になります。
第1法則のWは気体が「した」仕事なので、気体が「された」仕事であるWmはーWmとします。また、断熱的に変化させているので、気体が吸収した熱量は0です。


問3ではヒーターから熱を吸収してZ2からZ3になりました。問4ではBの気体に外部から仕事をしてZ4とし、コックを開いてZ3にしました。
過程が異なっても、最終的に同じ状態になれば気体が得たエネルギーは等しくならなければなりません。したがって問3で吸収した熱量Qhと問4でされた仕事Wmは同じ値となります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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