東京大学の2001年度、後期の入試問題です。高校物理の教科書には「平均自由行程」という用語は出てきませんが、穴埋め式で誘導されているのでうまく難しく考えずに誘導に乗っていきましょう。



問1(1)(2) 1つの分子と衝突してから、別の分子に衝突するまでの平均距離を「平均自由行程λ」といいます。気体の体積をλを用いて表し、状態方程式からλと圧力、絶対温度の関係を求めます。
(3)(4) 気体中に温度分布があることから、気体が運んでくるエネルギーを計算します。
(5)(6) 単位時間、単位面積当たりのエネルギーQの比例定数である熱伝導度αを求めます。前回の気体分子運動論の結果を使いながら、式変形をしていきましょう。
問2 与えられた数値を使って、ヘリウムとアルゴンの熱伝導度の大小を比較します。
問3 (6)の結果から空気の熱伝導度を求め、ガラスの熱伝導度との比をとります。(6)ができていれば、サービス問題です。

前回の問題はこの結論を導出する問題でした。この問題ではこの結果を利用して式を作っていくので、しっかり押さえておきましょう。



(1) 半径d、長さλの円筒の体積を求めます。その中に1個の分子が入っているので、NA個の分子があるときの体積がわかります。
(2) 状態方程式に(1)の結果を代入し、λを求めます。


(3)(4) 気体分子の平均運動エネルギーを気体定数とアボガドロ数で表します。これは絶対温度にのみ依存するので、左右の絶対温度を用いて表します。



(5) 与えられた条件で①式を書き替えていきます。式の形は見たことはないと思いますが、誘導に乗って代入していくだけですね!
(6) (5)で求めたQをさらに書き換えていきます。温度勾配の比例係数が熱伝導度αです。


分子の直径はヘリウムの方が小さいので(2)からλはヘリウムの方が大きいことがわかります。
またヘリウムの方が原子量が小さく、分子の平均の速さは2乗平均速度の平方根とほぼ等しいことから、ヘリウムの方が平均の速さが大きくなります。
熱伝導度αはヘリウムの方が大きく、熱を伝えやすいことがわかります。


最後は数値計算です。このような問題を取りこぼさないようにしましょう。
入試には時折、受験生には見慣れない題材が出題されます。知識を幅広く持っていることも大切ですが、問題文を頼りに解き進めていく力が重要です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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