大学入試演習　熱力学１　ピストンにはたらく力のつりあい

2002年度東京工業大学の熱力学です。熱力学では力を圧力と面積で表したり、気体や液体による浮力を考える必要があります。

問題の設定は
・液体の入った容器の中に、シリンダーが入っており、シリンダーのピストンと容器の床はばねでつながっている。
・問１はシリンダーは液面下dのところに静止。ばねは自然長。
・問２は液体と気体の温度をT1に上昇させ、容器のピストンの上に質量Wのおもりを乗せる。ばねは自然長。
・問３は問１の状況でばねを外し、シリンダーの位置を微小距離上昇させる。

問３の(2)には40字以内の論述問題もあります。

ピストンにはたらく力のつりあいは、気体や液体の分子運動によって支える力が生じていると考えます。ここから圧力を求めると、状態方程式やボイル・シャルルの法則から熱力学の諸量を求めたりすることができます。

(1)まずシリンダーのピストンにはたらく力を描きます。シリンダー内部の気体は下向きに、容器の液体は上向きに力を及ぼすのは良いと思います。大気圧による力が下から上にかかっていることに注意です。

水圧は水面からの深さによって決まりますから、ρ(d+h)gです。力のつりあいの式から圧力を求め、状態方程式から温度を求めます。

(2)次はシリンダー全体を考え、シリンダーの重さと浮力のつりあいを考えます。浮力はシリンダー内部の気体が押しのけた液体にはたらく重力の大きさに等しい力ですからρVgです。

(1)液体の密度に変化がないので、問１で考えた浮力も変化しません。したがって、シリンダーの気体の体積も問１と同じになります。温度は上昇したので、圧力は大きくなっています。

(2)問１と同様にシリンダーのピストンにはたらく力のつりあいを考えますが、おもりの重さによる影響を忘れないようにしましょう。細かいことですが、おもりの質量がWと与えられています。重さをWとすることが多いので、gのかけ忘れに注意です。

(1)シリンダーを微小距離xだけ上昇させたときの、変位と長さの関係に着目しましょう。必ず変化の前後の絵を描き、シリンダーの底から液面まで、容器のピストンからシリンダーの液面までの長さを正しく表します。

あとはピストンにはたらく力のつりあいの式とボイル・シャルルの法則(この問題では温度が一定なのでボイルの法則)で、シリンダー内部の気体による力P2Sを表し、＝で結んでxをyの関数で表します。

(2)問１ー(2)と同様に考えるとF’浮はρS(h+x-y)gとなります。またMg=ρShgですから、合力はxとyで簡単な式で表せます。問３－(1)の答えをyについて書き、代入すると合力Fをxについて表すことができます。

もしこの合力が変位xに対して逆符号であればF=ーKx型の復元力になり、単振動をして安定します。しかし、結果はFがxに対して同符号ですから、変位が大きくなるとともに上向きの合力は大きくなり、不安定となります。

問３は難問ですが、全体を通してピストンにはたらく力が基本テーマになっています。基本の積み上げが大切だということを改めて確認してください。