大学入試演習 力学1 動く台上での放物運動

入試問題

2000年度、京都大学の力学です。動く台車の上で小球を放物運動させるので、2つの座標系を考える必要があります。

問題の設定は
・床に固定されたXーY座標系、台車の斜面に固定されたx-y座標系
・台車の質量M、斜面はθの角度
・質量mの小球が時刻t=0で斜面のx軸からαの角度でv0の初速度で動き出す
・台車の初速度は0
・台車の動くレールと台車の斜面はなめらか

与えられた図とともに確認しましょう。

この問題で考える重要ポイントは上記の2つです。

この問題では直接は使いませんが「運動量と力積の関係」は、かなりの頻度で出題される事項です。これは運動方程式から、導出されます。

あとはお馴染みの「等加速度直線運動の式」です。難関大学といっても、基本事項はしっかり確認しましょう。

等加速度直線運動の復習
運動量と力積の関係の復習

複数の座標系を考えるときには、それぞれの座標系で絵を描きます。x-y座標は小球の運動、X-Y座標は台車の運動がメインです。

小球の速度のY成分を求められているので、右の図で考えます。ある時刻tで台車はVで動き、そのとき小球はvyで動いていますからY方向にはvycosθです。床に固定された観測者からは、小球の速度はこの2つの速度の合成として見られますね。

運動量保存則は衝突や分裂でよく使われますが、この問題のように接触した状態のままの運動でも使うことができます。運動量保存則が成り立つ条件「内力だけを及ぼしあい、外力による力積が0」を押さえておきましょう。

(2)はt=0の瞬間と、ある時刻tのときの運動量保存則を立て、v0yと(1)の答えを代入しておきます。

(3)は問題文を素直に落とし込み、運動量保存則の時間変化率を考えます。Δt当たりの変化では、初速度の項は定数ですから左辺は0です。Vとvyは時間に依存する項ですから、単位時間で考えると、それは「加速度」を表しています。このことから、台車の加速度を求めることができます。

(4)、(5)は小球の運動方程式です。小球が受ける力は、重力、垂直抗力、慣性力の3つです。「慣性力を考慮して」と問題文に書いてくれているので親切ですね。もし「斜面に固定した座標系に乗って」として書かれていなかったとしたら、「非慣性系の立場で慣性力を導入だ!」と考えましょう。

x方向には力を受けていませんから(4)の右辺は0ですね。y方向には重力とsin成分と慣性力のcos成分がかかっています。向きに注意して記述しましょう。

(6)、(7)はaxとayについて解きます。(i)式や三角関数の相互関係も使ってまとめていきます。

ここからは質量の条件と角度の数値が与えられました。(8)、(9)では小球の位置を求められているので、等加速度運動の式を使うはずです。したがって (6)、(7)の答えに数値を代入して、加速度を求めておきます。

それぞれの方向に運動を分解して考えると、x方向は等速直線運動、y方向は投げ上げの形になっています。

下端とはy=0の点です。このときの時刻はt=2Tなので、(9)の式にこの条件を代入します。これを解けば、小球が最高点に達する時刻が求められます。

台車の加速度は(3)で分かっているので、数値を代入します。台車は初速0で運動を始めたので、等加速度運動の式から2Tでの台車の速度が求められます。問題文にある通り、小球はこの後台車から離れるので、台車は等速直線運動をします。

「運動方程式の斜面に垂直な方向を考える」とありますが、この方向の加速度は0です。したがって、小球が斜面上を運動している間、小球にはたらく斜面に垂直な力はつりあいの関係にあります。

台車には小球にはたらく垂直抗力の反作用として、大きさ等しく向きが反対のNがかかっています。台車の水平方向の加速度運動はこのNのsin成分によって起こり、鉛直方向は力のつりあいが成り立ちます。

台車が床から受ける垂直抗力Rはこのように求められ、これと台車・小球の総重量3mgを比較すると、Rは小さいことがわかります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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